小説(がんばれば入手できる本含む)
題名 作者 出版社 入手 印象
花闇 皆川博子 中公文庫
田之助の弟子、三すじを通して描かれる田之助。幼少の頃から死ぬまでという、一生を見つめ続ける。もっとも近く、そしてもっとも遠い存在である。
今までの田之助の小説と違い、弟子をとおして描かれる彼は、実にリアルでそしてひたすら美しいのだ。幕末の動乱期なぞ、どこ吹く風、彼は勝手に病気にかかり、勝手に狂死していく。それが役者であり、田之助なのだと納得すると同時に、非常に心が痛む。作者の技によって、三すじに感情移入しているからだ。そして、ああやっぱり田之助は美しい男だと思うのである。
まず、これを読むのをおすすめする。一気に田之助にはまるはずである。
狂乱二廿四孝 北森鴻
角川ホラー文庫
田之助というよりも、江戸時代ミステリとしておもしろい。作者の田之助への愛は感じられるが、ミステリという形式におくとただの道具にしかすぎなくなる。
女形の歯 杉本苑子 講談社
未読
田之助の恋 小林恭二 角川ホラー文庫
未読
江戸役者異聞 山本昌代 河出書房
異聞なので、史実とは違うが、田之助一人称の小説の中では、一番らしく描かれていると思う。すべてのベクトルは自分に向いているという田之助である。つまり人格が一個しかないのである。せつなくなる暇もなく、そんな破綻している彼に魅力を感じる。淡々とした中に、非常に重い核がある小説。
三世沢村田之助
−小よし聞書−
南條範夫 文藝春秋
SM小説である。つまりM女とはこういうことで、Sとはこういう人(田之助)なのである。この小説で田之助にはまったという話も聞くので、案外自分のM心を刺激するにはちょうどよいのかもしれない。
読み終わったあとは、田之助に様をつけたくなる。
遠眼鏡足切絵図 山田風太朗 ちくま文庫
こんな田之さん見かけたよ!という話。
沢村田之助 矢田挿雲 報知新聞社
未読
田之助紅 舟橋聖一 河出書房
映画にもなり芝居にもなった、戦後日本のベストセラーである。
女を引きつけてやまない田之助は、ただ芝居のことだけを真摯に考え、世を憂いたりもする。実に正常な田之助に好感を持つと同時に、実は芝居のことだけしか考えていないことにも気づく。
田之助のよって身を持ち崩す女たちの話でもある。
澤村田之助曙草紙 岡本起泉 筑摩書房
戯作であるので、ほとんどが創作だと思われるが、発刊が明治13年ということから、当時の噂話のたぐいはかなり盛り込まれていそうだ。芸者や上野の坊主の話など、後々発行される田之助ものの基礎となっているような本。田之助がどんなやつだったかなどはいまいちわからないところがポイント。
読み物
三代目澤村田之助 今野裕一他 ペヨトル工房
資料的にも豊富で、これ一冊でほぼ網羅されている。貴重なのは、亡くなった宗十郎や現田之助、藤十郎のインタビューがあること。澤村家の中の一人という事がわかる。
なぜか最後は小説仕立てで一生を追っていくのだが、やはり田之助は物語として描いてみたいという気持ちに共感できる。その分史実とのずれが、どれほどなのか判別しにくくなっているのが、難点。近代の役者らしいところもある田之助である。羽左衛門とのドリームを見ているところなど、個人的にはうれしい。
伝芸好き、ミーハーな本でもあり、なんだか変な本である。
黙阿弥の明治維新 渡辺保 新潮社
田之助がなぜこんな役ばかり得意としていたのか、ずばり言い当てているので一読をおすすめする。